2012/10/28(日)レビュー iPhone用「歩数計」

iPhoneのような「尖った」設計のデバイスやサービスは、そのデバイスやサービスならではの利用法が見いだせなかったらタダのゴミである。

この小さくて軽くて携帯性の良いデバイスには、時計、GPS、加速度センサー、コンパスなどの高性能センサー類、グラフィカルな表示に適した(デバイスの大きさに比して)大きな画面、豊富な計算リソースが搭載されている。
私は自分の生活を考えた上で、iPhoneのこれら機能を活かせる使い方いは、高性能歩数計としての利用法があるのではないかと考えた。そこで、AppStoreで「歩数計」で検索してiPhone用歩数計をいくつか試してみたので、ここでそれをレビューしたい。

実際にインストールして試したのは、全て無料で使える
の計11種類である。

結論から言うと、満足に使えるものは無い。それは無料アプリで機能が削られているからではない。上で試した無料アプリにある問題は、有料アプリでも全く同様である。

では、「歩数計」の問題を傾向別に分けていこう。

1.設定ができず、使用に至ることができないもの

文字通り、使い物にならないものである。
  • 《健康増進アシストサービス》:インストール後の起動画面で「ログイン」ボタンだけが表示されるが、全くログインできず、そこから全く進めない。
  • 《gooからだログヘルスアシスト》:初期設定で、必須入力項目である身長を入力するとアプリが必ず落ちてしまう。実はこれは回避方法があって、「gooからだログヘルスアシスト」のウェブページで自分のアカウントを作り、ウェブ上で身長などの設定をすれば、使えるようになる。
どうやらリリースされた当初は問題なく使えたようなのだが、恐らくiOS 6になってから問題が発生し、なおかつアプリ作成側がどこに問題があるか気付けていない様子である。レビュー欄では「使えない」との怨嗟の声が溢れている。Appleの審査があっても、こんなのが素通りするのであるから、ユーザとしてはそれを信用しきってはいけないことがわかる。正直、この体験でiPhoneにちょっと幻滅した。

2.バックグラウンドで動作させられないもの

歩数計として動作させてる間は、他のアプリの操作ができない。歩行(セッション)開始時にスタートボタンを押し、歩行(セッション)終了時にストップボタンを押して終了させなければならない。また、万歩計として歩行を感知しやすいだろう尻ポケットなどに入れて歩いていると、フォアグラウンドで動作し続けているので、ポケットの中で知らないうちにボタンが押されて意図せぬ動作をしてることがある。勝手にセッションが終了していることすら稀ではない。
  • 《MyStep》:使いやすいとはとても言い難い。すぐにアンインストールしてしまった。
  • 《walkiNavi》:歩行セッションの軌跡を地図で見ることができる。歩いている最中に音楽を聴けるのがウリ(私は音楽を聴かないので、使い勝手は不明)
  • 《距離も分かる歩数計 runtastic》:セッション途中の「歩行速度」の変化をグラフィカルに表示してくれる。実はこの「歩行速度」と称してるものの実体は「(計測した)歩行ピッチ」☓「設定入力した歩幅」であって実際の歩行距離ではない。むしろ「歩行ピッチの変化グラフ」というべきものである。ただ、この「歩行ピッチの変化グラフ」は他に無い機能で、非常に有用である。なお無料版は「ちょっとしたお試し版」という位置づけらしく、機能の制限も多く、また有料版への移行を促すアレコレがしつこく表示される。
3.バックグラウンドで動かすことはできるが、その結果「歩数計」の機能が無くなっているもの

2の不便を解消させることができるが、「歩数計」を求めていたはずなのに、手にしているものはもはや歩数をカウントしないという……
歩行を感知するためには、加速度センサーを用いなければならないのだが、加速度センサーはフォアグラウンドで動作しているアプリだけが利用できるというiOSが課した制限があるようだ。そのため、バックグラウンドで動かせるようにするために、GPSで歩行距離を測り、歩数は「歩行距離」÷「設定入力した歩幅」で代用するという「紛い物」である。歩数計を謳ってなければそれでもよいのだが、なまじ「歩数計」のような体裁をしているから悪質である。下手をすると、自動車に乗って移動しただけなのに「1万歩達成!」などと表示されることもある。
  • 《お父さん歩数計》:シンプルな作りで、セッション毎の歩行距離と時間を記録できる。使いやすい。
  • 《健康増進アシストサービス 》:個人情報が何に使われるのか分からないのでちょっと不安。日毎の歩行セッションを記録でき、それらをグラフィカルに眺めることができ、ツイッターやFacebookに投稿することもできる。歩数計のみならず、食事管理の機能などもついていて、朝昼晩とご飯を食べたかと質問する等「きめ細やかな」お節介をしてくる。歩行セッション以外の時にも24時間動作し続けているので、電池を激しく消耗する。
  • 《永久不滅WALKER》:個人情報が何に使われるのか分からないのでちょっと不安。歩行セッションを記録する以外に、24時間歩行測定し続けてくれていて、毎時間の歩行距離もグラフィカルに表示させることができる。「今から歩くぞ」「今歩き終わったぞ」と一々ボタンを押すこと無く計測してくれる。加速度センサーを使ってはいないので、歩行を検知してるわけではないのだが、乗り物に乗っての移動などの大半は歩行距離にはカウントされない。恐らく40km/h以上になったら「歩行ではない」と判断するなどしているものと思われる。24時間動作し続けているので、電池を激しく消耗する。とにかく「一日の歩数」で健康管理したいという人には、この永久不滅WALKERがイチ推しである。
4.バックグラウンドでも歩数カウントできるが、歩行距離が測れないもの
記事をアップした当初は、「2.バックグラウンドで動作させられないもの」に入れていたのだが、指摘を受けて再調査したところ、バックグラウンドでも歩数カウントできる事が明らかになったので、修正して新たに項目立てした。
  • 《Walker-歩数計Lite》:シンプルな作りで、歩数カウントも正確である。日毎の歩行セッションを記録でき、それらをグラフィカルに眺めることができ、ツイッターやFacebookに投稿することもできる。ただし、GPSは用いておらず、歩行距離は「計測した歩数」☓「設定入力した歩幅」で表示されている。したがって振動しただけでも「歩いた」と計測されてしまう。
5.歩数計を謳ってはいないが、歩行距離計としては対応してるもの
  • 《Nike+Running》:セッション途中での歩行速度の変化を地図上、あるいは経時変化グラフで表示してくれるので、自身の歩法を研究、向上させたい人にはうってつけ。但し、単位を設定してもなおキロメートル表示とマイル表示が混在してしまうので、その点は非常にわかりにくく使いにくい。
  • 《RunKeeper - GPS Track Running Walking Cycling》:セッション途中での歩行速度の変化を経時変化グラフで表示してくれる。が、何故か折れ線ではなく棒グラフで、それがとても見にくい。
  • 《runtastic》:距離も分かる歩数計 runtasticと同じ会社作成のアプリ。有料版への移行を促すアレコレがしつこく表示されるのも共通。多機能だが、設定箇所があれこれありすぎて少々使いにくい。セッションの軌跡を地図表示する他、その経過の歩行速度変化と高度変化を同じグラフの上で表示できる。
runtasticをバックグラウンド、距離も分かる歩数計runtasticをフォアグラウンドで2つのアプリを同時に動かすことができるが、距離も分かる歩数計 runtasticの「歩行ピッチ変化」と、runtasticの「歩行速度変化」「高度変化」を合わせて見ると、自身の歩行の様子を多角的に検討できる。またruntasticはiPhone用の心拍計を繋いで同時計測・管理することができる。私自身は今後暫くこの2つのアプリを組み合わせて使っていく予定だ。もし気に入れば心拍計も追加するかも知れない。


iPhoneの素晴らしいハードウェア機能を活かしきれる「高機能歩数計」は、残念ながら無い。いくつかの不便を我慢しながらということになりそうである。